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うつ病と食事
うつ病と食事の関係
うつ病患者は増えています。
これまで日本ではうつ病の治療は抗うつ剤の投与、心身の休養、心理療法が中心です。これまで食事療法、運動療法については考慮されてきませんでした。しかし海外の研究ではうつ病の発症に食生活や運動が関係していることに数多く報告されています。
例えば地中海式食事に代表される野菜、魚介、穀物の多い食事を摂っている人は心臓病・生活習慣病・アルツハイマー型認知症・パーキンソン病・うつ病といった精神・神経の病気も少ないということがわかっています。日本の伝統的な和食もまた地中海式食事に通じるものがあります。
時代の変化とともに日本食も現代では肉やその加工食品・砂糖・白米のような精製食品が多くなりそれがうつ病の発症に少なからず影響を及ばしていると考えられます。
うつ病患者はどちらかと言えば肥満気味で中性脂肪や血糖値が高くメタボリック症候群の人が多い傾向です。
理由としては、食事の変化、不規則な生活、運動不足などがあり、つまりうつ病も生活習慣病の一つといえるのです。
食生活の見直しはうつ病だけでなく合併する生活習慣病改善のためにも必要です。うつ病患者には一部の栄養が不足していると指摘されています。それはビタミンB1、B2、B6、B12、葉酸、必須アミノ酸のトリプトファン、メチオニン、チロシン。魚油に含まれEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、鉄分、亜鉛などのミネラルです。
日本人の場合特に葉酸、トリプトファン、鉄分の不足が多いです。
葉酸 | 緑黄色野菜に多いビタミンです。体内でいろいろなものの合成に使われるので必要量の多い栄養素。またタンパク質、遺伝子情報を担うDNA、血液神経系で働くカテコールアミンなどの精製に必要です。 ※【カテコールアミン】はドーパミン、ノルアドレナリンといったストレス反応やうつに関する神経伝達物質で不足すると意欲が低下し、抑うつ症状を招きます。 |
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トリプトファン | セロトニンの材料となるアミノ酸です。うつ気分や不安感はセロトニンが関与しています。セロトニンから睡眠物質であるメラトニンが作られためトリプトファンが不足するとセロトニン、メラトニンも不足してうつや不眠の原因なります。 |
鉄分 | 不足すると疲労・焦燥感・無関心・集中力の低下などのうつ症状が現れることが知られています。出産すると大量の血液を失い、鉄分不足がひどくなるので産後うつはこの鉄分不足と無関係ではありません。 |
うつ病を予防するために
- 1日3食きちんと食べること
- 特に朝食は食べること
- バランスよく食べること
- 夜10時には就寝するように心掛けること
うつ病にかかわる主な栄養素と食品
ビタミンB群 | ビタミンB1(豚肉の赤身、ウナギ、玄米、ナッツ) ビタミンB2(レバー、ウナギ、納豆、卵) ビタミンB6(刺身、レバー、鶏肉、納豆、ニンニク、バナナ) ビタミンB12(貝類、レバー) 葉酸(緑黄色野菜、葉物野菜、納豆、レバー) |
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ビタミンD | ビタミンD(キノコ類、魚介類) |
アミノ酸 | メチオニン(牛乳、乳製品、肉、魚、ナット、大豆製品、卵、野菜【ほうれん草、グリンピース】) チロシン(牛乳、大豆製品、鰹節、シラス干し、乳製品、肉、卵、アボガド) トリプトファン(牛乳、乳製品、肉、魚、ナッツ、大豆製品、卵、バナナ) |
脂肪酸 | DHA、EPA(青背の魚…鯖、鰯、鰺など) |
ミネラル | 亜鉛(カキ、ウナギ、牛肉、レバー、大豆製品) 鉄分(レバー、赤身の肉、魚介類、海藻、青菜類、納豆) |
食材の素材選びのポイントは?
穀類 | できるだけ精製度の低いものを選択する 米なら玄米、胚芽米、麦入りや雑穀入りご飯 パンなら全粒粉、ライ麦パンなど |
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魚類 | 魚油に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)といった不飽和脂肪酸が豊富です。 |
肉類 | 豊富なタンパク質源(アミノ酸で構成されている)です。このアミノ酸が神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン)の原料となります。また脳内の主要な神経伝達物質(グルタミン酸、γ-アミノ酪酸、アスパラギン酸)の原料でもあります。 |
野菜 | 毎食摂取するようにします。 うつ病の人は葉酸などのビタミンB群が不足していることがわかっているので意識的に補充しましょう(ほうれん草、春菊、小松菜、モロヘイヤなど) |
乳酸菌 | 腸内細菌はストレスに対して大きな影響力をもっている。腸と脳は密接に関連していて良好な腸内環境を保つことがストレスに強くなる方法です。 乳酸菌、ビフィズス菌の摂取は、うつ病、不安、身体症状などのストレス症状を減らします。 |
プロバイオティクス | 乳酸菌、ビフィズス菌を含んだヨーグルトなどの食品・飲料 |
プレバイオティクス | オリゴ糖、食物繊維など |
うつ病の予防のための献立の注意点
※エネルギーをとりすぎないこと
(痩せている人はその限りではありません)
主食・主菜・副菜・汁物のバランスが大事です
主食 | できるだけ精製度の低い全粒の穀物から摂取するように(玄米・胚芽米、麦雑穀入りご飯、パンなら全粒粉で作ったパン、ライ麦パン、胚芽入りパン) |
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主菜 | 魚・肉・大豆製品でタンパク質を摂取するようにする。タンパク質はアミノ酸で構成されていて多くの酵素や神経伝達物質の材料になる。 |
副菜 | 野菜・きのこ・海藻・イモ類を摂取する(ビタミン・ミネラル類の補給源)ビタミン・ミネラル不足はうつ病のリスクが高くなります。また腸内環境の改善や肥満の予防になります。 |
汁物 | 野菜・きのこ・イモ類・海藻などを使いもう一品の副菜のつもりで摂取する。注意点は塩分の取りすぎです。カツオ・昆布などでだしをしっかり取り塩分が少なくても食べられるように工夫する。 |
まとめ
今あるうつが消えてゆく食事の10カ条
- 朝・昼・晩と3食は欠かさずに
- 食事はゆっくり、家族や仲間といっしょに
- カロリー(特に糖分)のとりすぎに注意
- 野菜は毎食たっぷりと
- 魚は週に3回
- 肉やレバーや赤身、鳥胸肉がお勧め
- 主食は玄米や胚芽米、全粒粉パンなどを
- 豆やキノコ、海藻、果実をとろう
- 乳酸菌や食物繊維で腸内環境を整えよう
- 食後には緑茶を。ジュースは控えめに
今ある「うつ」が消えていく食事 より抜粋
監修 功刀 浩 国立精神・神経医療研究センター
神経研究所 疾病研究第三部部長
献立
【主菜】
豚もも肉とパプリカのみそマヨ炒め
材料(1人分) | |
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豚もも肉(一口カツ用) | 3枚(100g) |
パプリカ(赤・黄) | 各1/4個 |
A | みそ:小さじ1 |
マヨネーズ:小さじ1 | |
砂糖:小さじ1 | |
にんにく(すりおろし):小さじ1/2 | |
オリーブ油 | 小さじ1 |
塩:こしょう | 少々 |
作り方
(1)豚肉とパプリカは1cmの細切りする。
(2)Aを合わせておく。
(3)フライパンにオリーブオイルをいれ熱し、(1)を入れ炒め、塩、こしょうをする。
豚肉に火が通ったら、(2)を加え火を止める。全体を混ぜ合わせ、器に盛る。
※豚肉は薄切りでも、鳥胸肉やささみ、鳥もも肉、カジキやイカなどの魚介類でもOK。
野菜も季節に合わせたものにしてもOKです。
エネルギー282kcal タンパク質23.3g 鉄1.2mg 亜鉛2.5mg
【副菜】
ブロッコリーの納豆和え
材料(2人分) | |
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ブロッコリー | 80g |
納豆 | 40g |
ネギ | 5センチ |
しょうゆ | 小さじ1 |
作り方
(1)ブロッコリーは小さく分けてゆでる。
(2)ネギは小口切りにする。
(3)納豆にしょうゆ、(2)を混ぜ、(1)に和える。
エネルギー56kcal 塩分0.4g(1人分)
シラス入り卵焼き
材料(2人分) | |
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シラス干し | 20g |
卵 | 3個 |
しょうゆ | 大さじ1/4 |
油 | 大さじ1/2 |
作り方
(1)卵は溶きほぐし、シラス干し、しょうゆを混ぜる。
(2)卵焼き鍋に油を熱し、(1)を流しいれ、卵焼きを作る。
(3)皿に盛り、お好みで大根おろしを飾る。
エネルギー153kcal 塩分0.5g(各1人分)
アミノ酸(チロシン、メチオニン、チロシン)
ビタミンB群(B2、B6、葉酸)
脂肪酸(EPA、DHA)
亜鉛・鉄
【汁物】
コーンと卵のスープ
材料(2人分) | |
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クリームコーン(缶) | 200g |
卵 | 1個 |
ニラ | 3本 |
A | 湯…200ml |
チキンブイヨン…1/4個 | |
豚ひき肉 | 50g |
塩 | 少々 |
コショウ | 少々 |
片栗粉 | 小さじ1/4 |
作り方
(1)ニラは、細かい小口切りにする。
(2)鍋にAを合わせ、中火で煮立てて、豚ひき肉を加えて和える。
菜はしで素早くほぐして火を通す。
(3)あくをとり、クリームコーンを加えて、塩、コショウで味を加える。
かたくり粉を倍量の水で溶いて加え、とろみをつける。
(4)煮立ったところに卵を溶いて流しいれ、さっと混ぜて火を通す。
(5)ニラを加えて、火を通す。
エネルギー189kcal 塩分1.3g
アミノ酸(トリプトファン、メチオニン、チロシン)
亜鉛、鉄
ビタミンB群